【かっとび一斗】天才が天才でなくなる瞬間
こんにちは。令和の世にしてかっとび一斗に魂持っていかれた人です。
天才が天才でなくなってしまう瞬間を二大天才間で検討してみました。
かっとびの世界で天才と称された主なキャラクターは、宗近暁と里美伊緒ですが、その天才たる条件として必要なのは「見えた!」という台詞に象徴される精緻な目である、という話をこちら↓の記事内で語りました。
面白いことにあの世界で天才であるために必要なのは、足や手などの直接的な身体能力ではなく、目なんですね。
つまり天才が天才でなくなる瞬間というのは、「その神がかった目が曇ってしまったときである」という前提で以下進めていきます。天才というワードが氾濫してますね。
大体、こんな感じ。
- 伊緒が目を曇らせたとき:自家中毒
- 暁が目を曇らせたとき:他者への配慮
- 天才はいつ目が曇る?
まずは伊緒ちゃんこと里美伊緒から。
1. 自家中毒に陥る里美伊緒
里美伊緒の目が曇った瞬間といわれると私はここしか思い浮かばないんですよね。
2期外豪戦26巻166ページより。
個人的好きなシーンTOP5には絶対入れる自信があるほど大好きなシーン。血まみれる里美伊緒。かっこええ……! 目が曇ってそうですね(物理的に)。大変だ。でもかっこええ……!
そもそもこのシーンに至るまでに何があったかというと、
中山兄弟負傷→伊緒がゴールを空けて攻撃に移る→失敗→全力でゴールに戻る→カズマと接触でイエローカード→PKにおいて一斗のミスキックに翻弄されゴールポストに頭強打→大出血
なんですよね。
この一連のシーン自体がとても白熱していて大好きなんですが、里美伊緒が何を見ているかと言われると大部分自分のことなのではないでしょうか。中山兄弟を労いつつも「得点能力の欠けたお前たちにこれ以上試合を任せられるか」などと言ってたりするので、とりあえず「自分」が何とかしなくてはいけないとは思っている。
扉絵にてシュート撃とうとしてる伊緒ちゃんが一斗から「目立ちたがり屋のGK!」と言われていますが、あながち大間違いってわけではないのではないのかもしれません。
そして何より例の血まみれシーン、何で目が曇っているかって言われたら、見たらわかる通り伊緒自身の血です。自分で自分の目を曇らせている。自家中毒。
つまり伊緒の目が曇るときというのは、その神がかった目の焦点を自分に当ててしまったときなのではないか?
というところで次は暁の方を見ていきます。
2. 他者に気づいてしまう宗近暁
宗近暁と言うキャラクターは神がかった目をもつライバルとして、1巻から最終46巻までずっと清雅と対峙し続けました。そしてその目をストライカーとしても、チームを引っ張る主将としても遺憾なく発揮し続けたわけです。
そんな暁ですが、一度だけ明確に指示を間違えるシーンがあります。
「ゴールを直接狙ってくるぞ 謝花右だ!!」
「謝花逆だ!! 戻れーっ!!」
46巻最後の清雅FKのシーンより。
改めて見ると本当に思いっきり間違えていてびっくりしました。
とりあえずこうなった原因を推察していきます。このFKの直前、それまでの宗近暁には見られなかった行動がもう一つ見られました。それが次のシーンです。
「やむを得なかったさ… やらなければ負けていた…」
そもそも清雅側にFKの権利がわたった直接的な原因は、城之内です。イエローカードをとられた上、自分が足を削ってしまったカズマが担架でフィールドの外に運び出されるのを見て呆然とする城之内の表情からして、城之内本人にとってもそれが全肯定できる結果でなかったのは明らかです。
城之内の反則だけで話が完結しているのであればむしろ良かったのでは、と思うのですが、ここでは宗近暁がそうした城之内の心情を察して、しかもそれに対して行動を起こしてしまっているんですね。
こうして暁が他者の心情を察し、その人の心理に直接アプローチするという行動は、実はそれまでに一つもなされていません。ここが初出です。(たぶん)
そしてこの後のFKで、暁は初めてはっきりと指示を間違える。
つまり、宗近暁の目が曇るときというのは、その神がかった目の焦点を他者に当ててしまったときなのではないか? (※ここでの「他者」は敵を含まない)
というところでまとめに移ります。
3. まとめ
試しに二大天才比較してみたら長くなりそうだったのでとりあえず切り上げました。
なのでもろもろの理由根拠は割愛しますが、個人的にはもともと里美伊緒は他者志向的、宗近暁は自己志向的なライバルであると解釈しています。
あと風飛びを読んで一つ確信したのは、里美伊緒は一斗と戦ってる。宗近暁は自分と戦ってる。
— ゆり乃@かっとび一斗 (@ktb_yurino0920) 2020年10月3日
おそらく終始ライバルに徹してくれているのは里美伊緒の方。
だからこそどっちも好きなんだけど、ただただライバルとしての性質が違うんだと思う。
なんかちょうどいい自分のつぶやきがあったので載せておきました。書いてたんかーい。
風飛び一斗で二人が再登場した時、伊緒が必殺技をひっさげ一斗を認めて宣戦布告までしてくれたときに、一方の暁は例の雑誌を見るでもなく一人で筋トレしてたのがすごい象徴的だよなあ……っていう呟き…だったと思います。
先述した「目が曇ってしまったとき」の特徴に戻りますと、伊緒は自分に焦点を当てたとき、暁は他者に焦点を当ててしまったときです。
これはそれぞれの天才が普段見ているもの(見るべきもの)ではないものたちです。
つまり、両者とも「見るべきでないものを見てしまったとき」に目が曇ってしまう。
つまりつまり、ちょっと飛躍しますが「天才は自分のするべきことをしないと、天才ではなくなってしまう」のだと考えられます。
同じ天才という共通点を持っていても、敵を待ち構えるGKと、自ら突破口を開かねばならないストライカーで、目の働き(=その天才性)が描き分けられているのが改めて面白く感じられました。
暁と伊緒は二人とも「天才ライバル」として作中に君臨していますが、この二人には類似点も相違点もそれなりにあると感じるので比較するのがとても楽しいんですよね。
ちなみに「見える」こと以外の共通点はわりと上半身裸になりたがることだと思っています(暴言)。天才なので仕方がない。
最後までお読みいただきありがとうございました。